ブリッジはそもそも剥がれる率が高いので、過去になんらかの修理で貼り直されたものがまた修理に持ち込まれるということも多いです。
大半はオーナー自身が接着剤を使って応急修理をしたもので、ぼてぼてにはみ出した接着剤の除去も大変なのですが、実はオーナーが貼ったブリッジの位置が本当に正しいのかどうかはナットから12フレットの位置を計測したうえで確認する必要があります。
通常、前のブリッジ位置の跡が残ってるような場合はオーナーが貼り直す場所を間違えたのが明確にわかりますので正しい位置に貼り直すなどの処置をします。
ところが、悩んでしまうのが古い Kamaka の場合です。
もともとのブリッジ位置がどう考えても違っているということが多いのです。いわゆるフレット音痴というやつですね。
理論的にはナットからブリッジ(というかサドルの位置)までの弦長(スケールと呼ばれます)は理論的にはナットから12フレットまでの倍、12フレットが丁度半分の位置になります。
ウクレレ作りのキットなどには明確に12フレットまでの倍の位置にサドルがくるようにブリッジを貼れと書いてあるものもあります。
ところが実際にはフレットボードより数ミリ上に弦は張られており、弾くときはフレットボードに押さえつけられるので伸びています。わずかですがチョーキングされている状態なんですね。
これは開放弦に近いローポジションで弾く場合ではそれほど気にならないのですが、厳密にはハイポジションに行くに従って音程が狂ってきます。しかも弦が太いほど顕著です。
これを補正するために実際のサドルの位置は理論値よりも数ミリ後ろへ下げて調整しています。最近では弦の太さの補正もありさらにサドルを弦ごとに細かく削って調整している場合もあります。
古い Kamaka の場合おそらく理論的に正しいスケールのままで製作されていたのではないでしょうか。当時 Kamaka より日本製の LUNA のほうが音程がしっかりしていたという記事も見かけたことがあります。
修理で入ってくる Kamaka はすでに一度ブリッジが貼り直されている場合が多いのですが、オーナー自身の修理で当初とはまた違った位置にに貼られていたりすることもあります。
それが補正するために行われていればいいのですが、さらに音程がおかしくなっているものもあります。そのため楽器としての正確さをとれば見た目が汚くならざるを得ないこともあります。
コレクションとして考えれば「骨董品」的なオリジナリティを重視した修理にすることも考えられますし、あくまで楽器としての機能を一番に考える修理もあります。
悩むところです。
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